新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長 (c)朝日新聞社
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長 (c)朝日新聞社
累計感染者数予測(週刊朝日2020年11月27日号より)
累計感染者数予測(週刊朝日2020年11月27日号より)

 やはり、恐れていた事態が現実になってしまうのか。一時は落ち着いてきたように見えた新型コロナウイルスの感染拡大が、冬の到来とともに急速に広がり始めている。「Go To」で経済を優先させたツケが回ってくるのか。そして、頼みの綱のワクチン開発の行方は──。

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 北海道一の繁華街すすきの。夜はネオンが輝くが、今、店先の看板や提灯は明かりを落としているところが多い。

「せっかく人が戻りつつあったのに」

 こう肩を落とすのは、すすきの観光協会の担当者だ。北海道では感染が急拡大している。11月13日の新規感染者数は235人。2日連続で200人を超え、上昇傾向にある。

 札幌市は7日からすすきの地区を対象に営業時間の短縮を要請。バーやキャバレーなどの飲食店は夜10時までの営業になった。先の担当者はこう言う。

「朝は車が凍りつくほどの寒さ。夏はずっと窓を開けていたが冬ではそれもできず、十分な換気が難しい状況です。それでも窓を少し開けて、ひざ掛けを用意して、とどこもしっかり対応しているんですが……“すすきの離れ”がまた進んでいる」

 寒さの到来とともに窮地に陥った北海道。その後を追うように、いま各地で感染が拡大している。13日の新規感染者数は東京で374人、大阪で263人。全国では1700人超が感染し、過去最多を連日更新している。

「大きな波が来ている。第3波と言っていい」

 こう指摘するのは国際医療福祉大学の松本哲哉教授(感染症学)だ。なぜ感染者が増えてきているのか。松本教授は気候が寒くなり、空気が乾燥してきたことに加えて、経済活動の活発化や人々の“慣れ”を指摘する。

 政府はこれまで「Go To トラベル」や「Go To イート」といったキャンペーンを実施。イベントの開催制限も段階的に緩和した。この間、東京だけでも毎日100~200人ほどの感染者が出ていたが、経済が優先された。

 感染が急拡大する今も、政府は北海道をGo To トラベルの対象からは外さず、来年1月末までだったキャンペーン期間を2月以降も延長する考えを示している。こうした動きに対して松本教授は批判的だ。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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