安全性についても、専門家からは疑問の声が上がる。「自分の患者にはこのワクチンを勧めませんね」というのは医療ガバナンス研究所理事長で内科医の上昌広氏だ。

 ファイザーは4万人以上を対象に実施している治験をもとに「安全性の深刻な懸念は見られない」と発表しているが、それを示すデータはまだ公開されていない。また、今回のワクチンはウイルスの遺伝子コードの一部を注射する、これまでにない手法を使う。本来なら時間をかけて安全性を確かめるところだが、それもできないのが実情だ。

「国は経済活性化や五輪の開催を優先し、ワクチン接種を推奨するでしょう。ただ、初めての手法を用いたワクチンで有効率90%超というのは理想的すぎる数字。観察期間が短く、正確なデータが取れていない可能性もある。どういった副作用の恐れがあるのかもまだわかりません」(上氏)

 それでも、政府は迅速なワクチン確保のため、健康被害が生じた場合の製薬会社の賠償責任を免除する法案を成立させる構えだ。ワクチンの有害性に詳しい健康情報研究センターの里見宏代表はこう見る。

「健康被害は当事者からすれば賠償で済む話ではない。安全性を軽視した進め方には疑問がある。日本で新型コロナの重症者も死者も少ない中で、安全性が確認できていないワクチンを打つことが本当に必要なのか、よく考えたほうがいい」

(本誌・吉崎洋夫)

週刊朝日  2020年11月27日号

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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