29年ぶりに2万5千円台の大台に回復した日経平均株価=11月10日、東京証券取引所 (c)朝日新聞社
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バイデン次期大統領 (c)朝日新聞社
バイデン次期大統領 (c)朝日新聞社

 国際協調路線への復帰と新型コロナウイルス対策の重視を掲げるバイデン氏の経済政策に対する期待は大きい。トランプ政権下で先鋭化した米中貿易摩擦の緩和や、コロナ危機への巨額財政政策が、日本経済にもプラスになると思われている。

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 そうした期待感もあり、バイデン氏の当選確実が伝えられた11月9日の日経平均株価は2万4839円とバブル崩壊後の最高値を更新。その後も上がり、13日終値は2万5385円に達した。

 マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆さんは、米中関係の改善が中国でビジネスを展開する日本企業に恩恵をもたらすと期待する。中国は、日本にとって最大の貿易相手国だ。

「(工作機械メーカーの)ファナックや(建設機械メーカーの)日立建機をはじめ、中国で事業を手がける日本企業は多い。中国への関税や中国企業を対象とした経済制裁が見直されれば、中国経済はもちろん、同国に進出する企業にとって大きな安心材料になります」

 通商政策に詳しいオウルズコンサルティンググループの羽生田慶介代表も言う。

「トランプ政権が経済や産業界に与えていた最大の恐怖は、予見可能性の喪失です。企業は先行きを見通せず、投資計画や調達計画を立てられずに困ってきました。バイデン政権が今後、仮に人権問題や気候変動対策で中国などに対して厳しい制裁措置を取ったとしても、一貫した方針に沿ったものなら経済界も納得するでしょう」

 ただし、すべてがバラ色になるかというと、そうとは限らない。楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジストの窪田真之さんは、こう語る。

「中国のハイテク企業への制裁は緩めないでしょう。トランプ氏のように制裁対象の中国企業と取引する会社にまで規制の手を伸ばさないのであれば、日本企業にもプラスですが、先端技術を巡る米中の覇権争いそのものは続くとみています」

 米国経済に詳しいみずほ総合研究所欧米調査部長の安井明彦さんも、こう指摘する。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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