「菅首相のプランは来年の東京五輪を予定どおり実施し、祝賀ムードで支持率が上昇したところで満を持して衆院を解散し、勝って総裁選に再選するというものです。だから五輪は絶対開催しなければならない。それまでは『Go Tо』や携帯料金値下げ、デジタル庁などで国民の期待感を高め、支持率を維持するでしょう」

 とはいえ、新型コロナウイルスの感染拡大が爆発的な勢いになれば五輪開催は不可能になり、政権の思惑は崩れ去る。

 予測困難な状況の中で、勝機をつかむ企業はどこか。本誌は今回、自社開発のAIで経済や企業の将来を予測するベンチャー、ゼノデータ・ラボ(以下、ゼノ社)の協力で、五輪開催・中止、それぞれの場合の、企業の業績への影響を調べた。

 分析には同社開発の業績予測サービス「ゼノブレイン」を使用した。ゼノブレインは、経済イベント同士の因果関係を解析したデータベースや、全上場企業の有価証券報告書などの開示資料をもとに、企業の業績に影響を与えるいくつもの「シナリオ」を想定。それぞれのシナリオが起きた場合に予想される影響度合いをマイナス100からプラス100までの数値でスコア化する。

 まず、五輪が無事開催された場合、どんな会社が大きな恩恵を受けるのか。ゼノ社の分析によると、1位は日本アンテナだった。超高精細な映像が特徴の「4K8K衛星放送」の利用が広がり、関連機器の需要増が見込めるという。

「五輪は次世代の放送技術の進展や普及の格好の機会です」(同業他社)

 2位の綜合警備保障(ALSOK)や10位のセコムなど、警備会社も上位に入った。ALSOKの創業は、前回の東京五輪の翌1965年。創業者の村井順氏は、前回の東京五輪で大会組織委員会の事務局次長として運営に深く関わった経緯がある。当時は日本に民間の警備会社はわずかしかなかったが、今では国内の警備会社は9千社超。警備業は前回大会の大きなレガシーと言える。

「(今回の大会でも)安全・安心面で支える責任ある立場として、各界のパートナー企業の皆様とともに、オールジャパン体制で成功に貢献したい」(ALSOK広報部)

 業界最大手のセコムも「準備段階を含めて大規模なイベント警備のノウハウや実績を積むことで、その後の対応力やブランドイメージの向上が見込める」(コーポレート広報部)と期待を高める。

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