「コロナで厳しい時もあったが、好転しつつある」

 ただし、ホテル評論家の瀧澤信秋さんは制度の課題を挙げる。

「宿泊業者の置かれた状況は非常に厳しいが、本当に救済が必要な中小の事業者に恩恵が行き渡るか疑問。割引額は宿泊料金が高いホテルほど大きくなる仕組み。つまり、利用客は高いホテルに集まりやすい。本当に困った事業者が助かる仕組みに改めてほしい」

 一方で、スガノミクスでマイナスの影響を受ける企業もある。携帯電話料金の値下げが代表例だ。マイナスの度合いが大きかった企業の上位は、1位のKDDIから4位のソフトバンクまで、大手携帯電話会社が占めた。

 菅氏は国内の高い携帯電話料金を総務相だったころから問題視してきた。18年夏には「日本の携帯電話の料金は高すぎる。4割下げられる余地がある」と発言。首相就任後も、家計の負担を軽くする経済対策の一環に位置づけている。

 携帯各社も「政府の要請を真摯に受け止め、対応を検討していきたい」(KDDI)などとそろってコメントを出すなど、料金を見直す姿勢を示している。

 しかし、「料金の値下げで携帯各社の経営体力は落ちかねない」と心配するのは、調査会社ICT総研の齊藤和代表だ。

「菅首相が言うように、携帯料金を単純に今よりも3~4割下げると、利益率はかなり落ちます。すると、研究開発投資に回す余裕がなくなり、米国などに比べ出遅れた次世代通信規格5Gの普及や、次々世代の6Gの規格作りや技術開発などがさらに遅れる可能性も出てきます。国際競争力とのバランスもよく考えるべきです」

 通勤ラッシュを避けられたり、効率的な働き方改革につながったりするなど利点に注目が集まるテレワークだが、ゼノ社の分析ではマイナスの影響が大きい会社も目立つ。とくに5位のコナカをはじめとする紳士服業界には逆風だ。

 小売り・流通業界に詳しいGマネジメント&リサーチ代表の清水倫典さんは「高価格帯の商品が柱だった会社ほど深刻」と言う。

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