「それはリスクのあることで、勇気がいる決断でした。でも、出演する番組を一旦見直したり、コントライブやYouTubeに軸足を移すことで、メンタル的にもスッキリしたし、笑いに対する志みたいなものも、自分たちの中で整理されてきた気がします。そしたら、YouTubeの再生回数も上がってきたり。いろんなことが上向いてきた」

 彼らがYouTubeに毎日アップするコント動画は、普通の視聴者のみならず、プロの芸人にも注目度が高い。月のうち3日、YouTubeのネタ作りの日と小道具や衣装合わせの日、本番を撮る日を決めて、ひと月分まとめて動画を撮影する。

「とにかく2人で会って、ずーっとおんなじ空間にいて、サイレンが聞こえてきたら、その音に乗っかって僕が何かして、そこから始まったり。大体が偶然起こったことがネタになるんです」

 6年前、吉本のスタッフから、「YouTubeにネタを毎日アップするのはどうですか?」と提案された時は、「毎日はさすがに大変ちゃうかな」と怯んだ。でも、過去のボツネタを「ネタのタネ」として引っ張り出したら、意外とスムーズだった。

「この6年間、ネタ切れになったことは一度もないです。単独ライブをやる時にいつも100本ぐらいネタを作って、そのうちの9割はボツにしているので、それを今掘り起こしているところです」

 YouTubeでは、コメント欄への書き込みに励まされることもしょっちゅうだ。月に1回、特によかったコメントには「福徳賞」「後藤賞」を贈るのも恒例になっている。

 キングオブコントで優勝した時も、その日アップされた動画のコメント欄は祝福のメッセージで溢れた。彼らが栄冠を掴んだ理由には、コントが独創的で面白かったことはもちろん、彼らの“コント”への一途でひたむきな取り組みへの評価もあったのではないだろうか。

(菊地陽子、構成/長沢明)

後藤淳平(ごとう・じゅんぺい)1984年生まれ。大阪府出身。2003年ジャルジャル結成。07年に映画デビュー。10年にジャルジャル主演映画「ヒーローショー」(井筒和幸監督)が話題となり、12年にも「営業1∞万回」でジャルジャルとして主演を務める。15年、18年ともにM−1グランプリ3位。19年にはキングオブコントで3位、今年は優勝を果たした。YouTubeの「ジャルジャルタワー」は毎日18時にアップ。

週刊朝日  2020年10月16日号より抜粋