室井佑月・作家
室井佑月・作家
イラスト/小田原ドラゴン
イラスト/小田原ドラゴン

 作家・室井佑月氏は、安倍首相の病気の話とは別に長期政権がしてきたことを総括すべきだと主張する。

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 メディアが目を覚まさない。安倍政権の総括がきちんとなされていない。

 安倍政権が7年8カ月つづいたことで、この国の良いところが破壊されたとあたしは思っている。安倍氏自身「政治は結果だ」といっているが、これは結果さえ伴えばどんな汚いことをしても許されるということでもあり(東京五輪招致の賄賂であったり、党から金を出した選挙の買収であったり)、そこまでいきつくこともなく、結果としての成果をデマでもなんでもいいから上げておけばOK(北方領土の2島+αだったり、アベノミクスのトリクルダウンであったり、拉致被害者の全員救出だったり)ということであった。

 破壊された大きな組織は、メディアと霞が関。

 安倍氏は病気を理由に総理を辞任することになった。が、病気の話と彼がこれまでしでかしたことは別に話されなくてはならない。それなのに、安倍首相の罪の部分の総括が詳しくされない。「病気の人になにをいってるんだ? まず、お疲れさまでしただろ」

 そういってくる集団がわらわらと湧いてきて。というか、そうなるようにテレビ番組が作られている。

「なにをいってるんだ?」って、長期政権の総括をしようとしているだけなんですが? あの人は、目に見えてメタメタになっているこの国のトップだった人ですよ。病気の人を責めるな? そちらこそなにをいっているのだ、ともういい加減に言い返すのも嫌になってきた。

 はじめから考えると、安倍首相の病気という国家の秘密を表に出してきたのは官邸サイド。それがどういうことであるのか、その意思を一生懸命くみ取って、番組を作っているのがメディアサイド。

 もちろん指示を受け、安倍政権の総括の邪魔をする人もいるだろう、意思をくみ取って行動したほうが得だと判断している者もいる。そして作られた流れに簡単に踊らされる人もいる。

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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