安倍首相の辞任表明から、「電光石火」の早業で党内5派閥の支持を取り付け、ポスト安倍候補の中で圧倒的優位な構図をつくった菅義偉官房長官。その背景には、政局のコントロールに長けた二階俊博幹事長との3年半前からの「蜜月関係」があった。
菅─二階同盟によって岸田文雄政調会長、石破茂幹事長という政敵2人を追い落とし、天下取りへの道はほぼ盤石。すべてが菅─二階同盟の計画通りに進んでいるかのような展開に、二階派議員は「これで二階さんは幹事長留任だ」と話す。自民党の無派閥議員のうち約30人が菅グループと言われ、二階派の47人と合計すると約80人。党内最大派閥である細田派の98人に次ぐ一大勢力となった。菅氏周辺は「ひそかに菅さんを支持する『隠れ菅派』も合わせると、100人程度の規模になるはずだ」とソロバンをはじく。
ただ、党内には早くも派閥間の軋轢が生じている。菅氏と二階氏の動きに防戦一方だった細田派、麻生派(54人)、竹下派(54人)の3派閥は9月2日、細田博之氏、竹下亘氏、麻生氏の各派閥会長がそろって記者会見を開き、二階氏抜きで菅氏への支持を表明。この動きを主導したのは麻生太郎氏だった。
これに二階氏が怒った。二階派幹部の河村建夫元官房長官は「主導権争いをやっている、と余計な臆測を呼ぶ」と麻生氏に伝えたことを明かした。前出の二階派議員は言う。
「二階派にケンカを売ってるのか? 菅さんに『3派を優先した内閣にしろ』と言っているようなものではないか。そこまでしてポストが欲しいか」
目下の焦点はすでに新内閣の人事に移っている。特に、政権の「要」である官房長官に誰がなるかで、水面下の駆け引きが始まっているという。
「菅氏の意中は若手時代に師事した梶山静六の息子で気脈を通じる無派閥の梶山弘志氏、次いで加藤勝信氏と言われる。しかし麻生派が河野太郎氏を、細田派が西村康稔氏をねじ込もうとしており難航している」(自民党関係者)