かつては戦争が景気のカンフル剤になり、現代はイベントで景気浮揚させようとしてきましたが、これからはそうもいかないでしょう。

五木:東京五輪は無理だと誰もが感じている。

姜:オリンピックは難しいでしょうね。アフリカや中南米で猖獗(しょうけつ)を極めているこの状況が来年変わるとも思えません。

 安倍首相は五輪招致演説で、福島第一原発の汚染水について「アンダーコントロール(管理下にある)」と述べて、それが招致実現へと繋がったわけです。

 でも今回のコロナ禍は、いろいろな希望になるようなものを示そうと、どんなに政治家たちが策を弄してもね、うまくいかないんじゃないか。だから落ちるところまである程度落ちてしまうでしょう。五木さんの言われるパラダイムチェンジが起きて、社会の枠組みががらりと変わる可能性は大いにありますね。

(構成/本誌・木元健二)

五木寛之/いつき・ひろゆき 1932年、福岡県生まれ。生後まもなく朝鮮半島にわたり、47年引き揚げ。66年『さらばモスクワ愚連隊』でデビュー。『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、『青春の門』『戒厳令の夜』『風の王国』『親鸞』『大河の一滴』など。

姜尚中/カン・サンジュン 1950年、本県生まれ。東京大学名誉教授で、専門は政治学・政治思想史。熊本県立劇場館長。現代人の生き方のヒントを探る『悩む力』のほか、『在日』『母の教え 10年後の「悩む力」』など。

週刊朝日  2020年9月11日号より抜粋