そんな彼らにとって、出来の悪い総理に取り入り、自分たちが描いたシナリオで動かすことができれば、自分たちが日本国を支配していると日々実感できる。究極の「俺は偉い」感だ。それが目的になれば、政策が実現するかどうかとは関係なく、とにかく総理が総理でいてくれることが最重要課題になる。

 だから、何があっても安倍総理辞任は認められない。安倍降ろしにつながる体調不安説を認めるなどもっての外となる。

 しかし結局、安倍総理は退陣することになった。

 おそらく、官邸官僚たちは、引き続き、「俺はやっぱり偉い」と感じ続けるための次の道を探し続けるのであろう。そんな彼らは、安倍総理以上に「お気の毒」な人たちかもしれない。

週刊朝日  2020年9月11日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など

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古賀茂明

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古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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