お前は甲子園に出たからいいじゃないかとも言われます。もちろん、甲子園に出て全国制覇を経験できたことは大きな自信になりました。しかし、そこで心や体が燃え尽きてしまっては豊かな人生とは言えないでしょう。長い人生の中で高校時代というのは、野球で言えばまだ三回。序盤です。僕は52歳ですが、それでもまだ六回が終わったくらい。ゲームセットまで気が抜けません。人生は自分が頑張っただけ楽しくなるし、いつまでも下を向いていればそういう人生にしかなりません。僕自身も大事な七、八、九回に向かって頑張るつもりです。

 僕は投手出身ですから、こう伝えたい。「人生の勝利投手にならないと、野球をやっていた意味がない」と。人生を通して成し遂げたい大きな目標を立てることで、自身を奮い立たせ、次への一歩を踏み出してほしいです。

●桑田真澄さんのプロフィール
1968年、兵庫県生まれ。PL学園で甲子園に5季連続出場し、優勝2回、準優勝2回。86年、巨人に入団。投手としてプロ通算173勝。2007年に39歳でメジャー初登板を果たす。08年、引退。

構成:本誌・秦正里

週刊朝日増刊「甲子園2020」より

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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