エッセイスト 岸本葉子(撮影/写真部・掛祥葉子)
エッセイスト 岸本葉子(撮影/写真部・掛祥葉子)
エッセイスト 岸本葉子(撮影/写真部・掛祥葉子)
エッセイスト 岸本葉子(撮影/写真部・掛祥葉子)

 コロナ禍で人々の価値観が変化している。結婚とは、家族とは……。エッセイストの岸本葉子(59)さんに話を聞いた。

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 大学を卒業した1980年代当時、女性は30歳までに結婚しているのが一般的でした。男女雇用機会均等法も施行前で、4年制大学を出ても女子にはあまり勤め先がない時代でした。就職したのは生命保険会社。既に一人暮らしでしたが、男性の上司から「一人のご飯はさみしくないの?」なんてしょっちゅう聞かれていました。当時はそれが当たり前の空気だったんです。

 大学時代から交際していた男性がいて、その人との結婚も考えていました。でもこのまま会社の世界しか知らないのも、と思い、数年で退職して中国に留学したんです。留学中、「朝日ジャーナル」(92年休刊)に中国の大学事情に関する記事を書いていて、帰国後は文筆の仕事が徐々に増えました。

 30代になると、ライターとしての仕事もだんだんとまわり始めるようになりました。当時、女性は結婚すると仕事を辞めるという雰囲気がまだ強かったです。私は「良い人が現れたら結婚も視野に入れよう。でも、わざわざ今の仕事を手放してまでする必要はない」と思っていました。

 36歳のときにマンションを購入したのですが、そのときは結婚の可能性も考えて2LDKを選んだんですね。でも、いざ住み始めると居心地が良く、誰かの荷物を入れるなんて考えられなくなってしまって。独身を貫こうと思っていたわけではありませんが、こう考えると「おひとりさま体質」だったのかもしれないです。

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