「眠る直前に非常にグロテスクな怖い夢を見る、金縛りに遭うといったことも、ナルコレプシーの特徴的な症状といえます」(内田医師)
このほか、驚いたり、激怒したり、思いきり笑ったりと、感情が高ぶった後に急に力が抜けるカタプレキシー(情動脱力発作)という症状を伴うことがある。
もう一つの特発性過眠症とは、睡眠不足がないにもかかわらず、過去3カ月以上にわたって、昼間に強い眠気に襲われる、1日に11時間以上眠る、といった症状があった場合に考えられる過眠症だ。
この症状に加えて、日中の眠気を診断するMSLT(反復睡眠潜時検査)で、睡眠潜時(昼寝をしたときに、実際に眠りにつくまでの時間)が8分以下など、診断基準が設けられている。
内田医師は、過眠症の診断の難しさを次のように説明する。
「こうした基準は、睡眠不足症候群などでも満たしてしまうことが多く、単なる睡眠不足であっても特発性過眠症と誤診されてしまうことがあります。それを防いで、より正確な診断をつけるため、1週間前から睡眠を測る装置を使って睡眠状況を確認した上で、MSLTを行います」
治療は薬物療法が中心で、ナルコレプシーではモディオダールやリタリン、ベタナミンが、特発性過眠症ではベタナミンが使われる。今年2月には、特発性過眠症に対してモディオダールが保険適用となった。ナルコレプシーに対しても、原因に着目した新しい薬の開発が進んでいる。
とはいえ、過眠症の人たちが置かれている環境は、「10年前とほとんど変わらない」と、内山医師は打ち明ける。
「周囲の理解が得られず、何とか原因をはっきりさせて治したいと、医療機関を受診する方が大勢います。少なくとも、病気のために日中、耐えがたい眠気で困っている人を怠け者と見なさない正しい知識の啓発が必要だと思います」
(本誌・山内リカ)
※週刊朝日 2020年7月17日号