※写真はイメージ(Getty images)
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過眠症の種類(週刊朝日 2020年7月17日号より)
過眠症の種類(週刊朝日 2020年7月17日号より)

「怠けている」。そんな周囲の理解不足から生きづらさを抱えているのが、“過眠症”の人たちだ。慢性的な睡眠不足による眠気との鑑別が難しいなど、診断面でも多くの課題を抱えているという。過眠症とはどんな病気なのか、体験者の声とともに紹介する。

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 過眠症は睡眠障害の一つ。「昼間に耐えがたい眠気に襲われる」のが特徴で、商談中など眠るのが考えられない場面で居眠りする人もいる。普段の生活にも支障が出るが、それと同じくらい当事者を苦しませるのが周囲の理解不足だ。「規則正しい生活をすれば治る」といった不適切な助言や、「寝すぎているから眠くなる」といった偏見などのため、つらい思いをしている人が少なくない。

「過眠は病気で起こる可能性があることを、多くの人に知ってもらいたい」

 そう願うのは過眠症患者の一人、小嶋麻里奈さん(33)だ。2017年、同志の過眠症患者とともにNPO法人日本過眠症患者協会を立ち上げた。

 小嶋さんを苦しめていた症状は、強い眠気よりも、むしろ10時間前後にわたる長時間の睡眠だ。それを削ると、体調不良に襲われる。典型例ではなかったため、なかなか診断にたどり着くことができなかった。

 最初に症状が表れたのは高校1年のときだという。

「それまではむしろ、睡眠時間が短いほうだったんです。ですが、あるとき突然、原因不明のとてつもない眠気に襲われて、それから睡眠時間が長くなりました」

 初めは環境の変化で疲れていたためだと思っていたが、そうではなかった。1日の睡眠時間は短くても9時間、長いと21時間にも及んだ。平日は学校から帰宅した夜7時から翌朝7時まで睡眠を取る。休日は不足した睡眠を補うために、十数時間の睡眠。こうすれば授業中に眠気に襲われずにすむ。なんとかやりくりしながらの高校生活だった。

 当時、小嶋さんが感じていた眠気は「恐怖を感じるほどのもの」だったという。

「頭にとてつもない強力な睡眠薬を打たれて、無理やり寝かされるような眠気。呼吸が止まっていくような感じで眠りに入り、いくら寝ても同じ眠気が襲ってくる。このまま意識がすべてなくなって、永遠に起きられないのでは……と感じたことは何度もあります」

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