9月入学は政治の覚悟が必要なテーマなんです。大学も役所も目先のデメリットばかり言って動かない中で、長い目で人づくりのために大学教育を変える。そうした覚悟を持つには国の将来をこうするという展望が必要です。

 父はそうした展望を持っていたからこそ、衆院議員在職中に多くの省庁にわたる33本もの議員立法を成立させました。役人も学者もうちで勉強会をして、私が主婦の頃にお茶を出すと、父に「座って聞いていろ」と言われました。門前の小僧だった私もその後に議員立法に取り組みました。

 政治は本来、現実に風穴を開け夢を実現する素晴らしいものです。ところが今の政治にはそうした覚悟を感じないどころか、政治への信用をこの7年間で失墜させた。安倍内閣の求心力どころの問題ではありません。

 特に森友・加計、桜を見る会、河井夫妻、そして今回の検察庁法の問題で、首相の立場にある政治家の薄っぺらさが国民に完全に見透かされた。国民が政治家にあきれかえり、軽蔑してしまったことが本当に残念です。

――安倍内閣が座す今の政治では、9月入学は実現できないと。

 ええ。今の政治には知性、正義感、情熱といった、国民のために現実を変えるエネルギーを全く感じない。目の前の問題をごまかして政権維持だけです。

 縁日のハツカネズミを知ってます? 回し車をからからと一生懸命走るけど、全然前に進まない。安倍さんはハツカネズミみたい。長期戦になるコロナ対策を理由に政界に居続けなくて結構。私人になってあの奥様と世界旅行でもされてはというのが、私のもう一つの提言です。

(聞き手 朝日新聞編集委員・藤田直央)

※週刊朝日6月12日号に加筆