「陽性と偽陽性の差が誤差の範囲でしかなく、0.6%という陽性率に統計学的な価値はまったくありません。本来ならば献血に来た人だけでなく、発症後に回復した人の検体を対象にして抗体がどれだけ検出されるのかのデータを示さなければならなかったはず。抗体キットの精度を確かめるにしても、科学的にナンセンスです」(中村医師)

 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師もこう指摘する。

「献血を検査対象にしたことも疑問です。新型コロナに感染した人が献血するとは考えにくいから、市中感染の実態はわからない」

 独自に抗体検査に取り組んでいる福島県平田村のひらた中央病院の非常勤医、坪倉正治医師はこう語った。

「検査方法により感度に差があるなど、私たちもいま試行錯誤しながらデータを積み上げている段階。厚労省の発表は早計です」

 6月初旬から1万人を対象に検査が実施されるが、全体像を把握できるのか。(本誌・亀井洋志)

週刊朝日  2020年6月5日号