加藤勝信厚生労働相。緊急事態宣言が解けても、コロナとの闘いはまだまだ続く (c)朝日新聞社
加藤勝信厚生労働相。緊急事態宣言が解けても、コロナとの闘いはまだまだ続く (c)朝日新聞社

 東京都の陽性率は「0.6%」──。厚生労働省が5月15日に発表した新型コロナウイルスの感染歴を調べる抗体検査の結果だ。

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 抗体検査は新型コロナに感染した後、体内にできるタンパク質(抗体)の有無を調べる。日本はPCR検査の実施数が少なく、新型コロナは感染しても軽症や無症状で済む人が多いため、感染者数は判明しているよりもかなり多いと考えられている。抗体検査で実際の市中感染の割合を推計することが期待されているのだ。

 今回、国の研究班が行った抗体検査は、4月下旬に東京と東北6県で献血をした人それぞれ500人を対象に行われた。結果、東京では0.6%にあたる3例で、東北では0.4%にあたる2例で陽性反応が出た。

 都の人口は約1400万人のため、0.6%の陽性率から推計される感染者数は約8万4千人。PCR検査で確認された感染者数が約5千人だからその17倍となり、一見、もっともらしい数字に見える。ただ、この計算には“異論”もある。

 シカゴ大名誉教授の中村祐輔医師が厳しく批判する。

「不確かな陽性率を厚生労働省が公表し、それが独り歩きしてしまっている。日本の科学力のなさを示しているようなものです。メディアも東京の0.6%ばかり取り上げますが、同時に出てきた東北の0.4%が非現実的な数字であることに目を向けようとしない。サイエンスリテラシーが欠如しています」

 どういうことなのか。先ほどと同じ計算を東北6県に当てはめると、推計される感染者数は人口約900万人のうち0.4%で約3万5千人となる。PCR検査で確認されている感染者数は約300人だから、その差は115倍にもなる。これでは検査の信ぴょう性自体に疑義が生じる。

 厚労省は今回の抗体検査は検査キットなどの性能評価が目的だとしているが、中村医師はそれにしても今回の検査はおかしいと言う。

 前述のとおり東京では500検体中3例(0.6%)が陽性反応だったが、実は新型コロナが存在しなかった昨年1~3月の保存血液500検体からも2例(0.4%)の陽性反応が出たのだ。誤って検出された「偽陽性」と考えられる。

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