藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長兼在日代表などを務めた。2013年から19年まで参議院議員。主な著書に『日本・破綻寸前 自分のお金はこうして守れ!』(幻冬舎)や『吹けば飛ぶよな日本経済』(朝日新聞出版)/(撮影・多田敏男)
藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長兼在日代表などを務めた。2013年から19年まで参議院議員。主な著書に『日本・破綻寸前 自分のお金はこうして守れ!』(幻冬舎)や『吹けば飛ぶよな日本経済』(朝日新聞出版)/(撮影・多田敏男)
原真人(はら・まこと)/1961年、長野県生まれ。88年に朝日新聞社に入り財務省や日本銀行、民間企業などを取材。論説委員を経て経済担当の編集委員。主な著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論』(朝日新書)/(撮影・多田敏男)
原真人(はら・まこと
)/1961年、長野県生まれ。88年に朝日新聞社に入り財務省や日本銀行、民間企業などを取材。論説委員を経て経済担当の編集委員。主な著書に『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書)、『日本「一発屋」論』(朝日新書)/(撮影・多田敏男)
コロナ対応に追われる日本銀行=撮影・多田敏男
コロナ対応に追われる日本銀行=撮影・多田敏男

 国が緊急事態を宣言しコロナショックはさらに深刻になっている。外出自粛で消費は止まり、かつてない経済危機がそこまで来ている。私たちはどう乗り越えればいいのか。そのヒントを紹介しよう。

 国内外の銀行で活躍し「金融界のレジェンド」とも評された藤巻健史さん。本誌でコラム「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」を長年連載していたことでもおなじみだ。日本経済の構造的な問題を訴え、『日本・破綻寸前 自分のお金はこうして守れ!』を3月に出した。

 朝日新聞の原真人編集委員は、いち早く「アベノミクス」の危険性を指摘。日本銀行の株価底上げ策などに警鐘を鳴らしてきた。

 2人は2019年12月13日号で「Xデーに備えよ!」のテーマで対談。政府の財政や日銀の健全性が揺らぐなか、危機が現実化すると呼びかけていた。今回は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本経済の未来を予測した。

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■藤巻健史

 コロナショックは経済的にすごい状況になっている。外国人は日本人より危機感がある。海外金融機関のトップの意識と比べると、日本はまだ危機感がないのかなと思う。

 これから倒産や失業がかなり出てくる。企業の売り上げが止まることで、資金繰り倒産が相次ぐだろう。大手電機メーカーに勤め約30年前に亡くなった私の父が、「売り上げが10%減れば資金繰りが苦しくなるんだよ」と言っていたことを思い出した。

 日本の株価はいったん下がったものの持ち直し、1割5分くらいしか落ちていない。この株価が持続すれば逆資産効果が働かず、経済は当初予想ほどには悲惨にはならないかもしれない。しかし2番底、3番底を招くようだと、戦後最悪の経済状態が見込まれ、ひょっとすると1929年の世界恐慌以来になるかもしれない。

 経済が回復するにはコロナウイルスを抑える必要がある。ワクチンや薬がすぐに開発されない限り、自粛は長引く。倒産や失業が増えこれから株価は下がる。株価下落の「逆資産効果」で消費はさらに落ち込む。

 政府は大規模な財政出動で経済の悪化を食い止めようとしており、個人も企業もお金をもらうことを考えている。国債を発行して財政出動をするなら、本来は将来の増税を考えないといけない。国債は将来の税収を前借りする「借用書」で、政府が税金で絶対元本を返すから信用される。借金を返さないのであれば、誰も貸してくれなくなる。東日本大震災を受けて復興増税が導入されたが、今回はもっと大きい負担増があるはずだ。増税は景気の足を引っ張るので、V字回復はより難しくなる。

 民間の金融機関や企業はいまは手持ち資金を厚くしたいので、国債を買う余力はない。国債は日銀が買うことになり、財務の健全性が一層危うくなる。

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日銀の破綻はもはや避けられない