次に「CD4/8比」です。CD4/8比は、免疫力を増強する細胞(ヘルパーT細胞)と抑える細胞(サプレッサーT細胞)の比率です。免疫力は低いとウイルスなどに負けてしまいますが、一方で高すぎると膠原(こうげん)病やリウマチなどを引き起こします。ですから免疫力を増強する細胞と抑える細胞でバランスをとる必要があり、CD4/8比が正常範囲であることが大事になります。

 実験では、笑いの前と後で、この比率が低かった人は上昇し、高かった人は下がって、すべての人が正常範囲に近づいたのです。

 さらにもう一つ、面白い実験をしています。6人の学生に表情だけの笑顔を2時間続けてもらい、前後で免疫力を調べたのです。その結果、笑顔をつくるだけでもNK細胞の働きが活発になったというのです。

「作り笑い」でも効果があるというのは、いいですね。私の患者さんで、笑えない日は鏡と向かいあって、作り笑いをしているという方がいます。それを何回も繰り返していると、自分の顔がおかしくなってきて、本当に腹の底から笑ってしまうというのです(笑)。

 ウイルスが不安になったら、鏡と向き合って、大いに笑いましょう。

週刊朝日  2020年5月1日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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