――男女とも社会から叩かれるリスクがあるにもかかわらず、なぜ不倫をやめないのだろう。

 人間は一夫一婦型ではない生き物だからです。一夫一婦型の婚姻という仕組みは、経済的、公衆衛生上の要請、その他複合的な要因によるもので、絶対的な原理ではないのです。

 俗に「不倫遺伝子」と呼ばれる遺伝的な変異があります。

 アルギニンバソプレシン(AVP)という脳内物質の受容体の多型で、貞淑型か不倫型かに分かれます。

 AVPとは、弱者へ向ける愛情のことだと思っていただければ。

 自分よりも弱い人に優しいとか、親切に振る舞うということは、後天的に学ぶものだと思われがちです。でも実際は先天的な部分の影響も無視できないのです。

 親切のグラスみたいなものがあるとイメージしてください。そのグラスの大きさは生まれつき決まっていて、タライみたいに大きな人もいれば、おちょこみたいに小さな人もいます。親切の器の大きい人は貞淑型、小さい人が不倫型です。

 人間が恋に落ちるとき、相手の人間性を正確に見て判断しているわけではありません。外見だとか新鮮さだとかに魅力を感じることが多いはずです。そのときは理性が麻痺している状態ですので、アバタもエクボ。冷たい振る舞いも、決断力がある、勇気があるなどと好意的に評価したりします。

 ただこの状態は、パートナーシップを促進するための仕掛けなので、ある程度経てば麻酔が切れるようになくなってしまいます。

 その後に、どうやって関係を維持するか。恋心はなくなったけど人間として尊敬できるとか、優しい人だから好きだとか、そういう気持ちがあれば無理なく一緒にいられるでしょう。

 逆に「なんでこんな人と一緒になっちゃったんだろう」と嘆く人もいます。そういうパートナーは、小さいグラスの不倫型なのかもしれません。

 貞淑型と不倫型の割合は、1対1と考えられています。

――女性が妻のいる男性に魅かれるのはなぜか。

 女性は、女性から愛された実績のある男性に安心感を得ます。誰かにいったん選ばれているということが、魅力に感じるわけです。

 おもしろい実験があります。男性一人だけが写っている写真と、男性が笑顔の女性と一緒に写っている写真の2枚を用意します。それを女性に見せてどちらが魅力的か尋ねると、女性と一緒の写真のほうがかっこいいと答えるんです。写っているのは同じ男性なのに。

 私たちは、目で見たものそのままを認知するわけではありません。目で見た情報を脳に送り、脳が修正した画像を認知するんです。

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