医療ガバナンス研究所の上昌広理事長が語る。

「感染症の基本は診断と隔離ですが、日本は徹底してPCR検査の数を抑制してきた。そのことによって感染が拡大したばかりか、国民を不安に陥れています」

 同研究所の調査によれば、日本の人口千人あたりのPCR検査数は0.37(4月6日現在)。ドイツは16.0、イタリア13.7、韓国9.0、米国6.6なので、日本は桁違いに少ないことがわかる。上氏はこう警告する。

「日本はこれから感染の蔓延(まんえん)が露見してくると予測しています。特に懸念されるのは院内感染。最近ようやく軽症者はホテルなど病院と別の場所に隔離しようとしていますが、これまで一律で入院させていたため院内感染を広めてしまった」

 感染者のうち院内感染の占める割合は、東京都で約19.8%、千葉県では49%に及ぶ(4月4日現在)。

 東京都中央区の国立がん研究センター中央病院では医師と看護師合わせて6人の感染が確認され、外来・入院とも新たな患者の受け入れを一時中止(4月14日再開予定)。予定していたがん患者の手術を延期せざるを得ないケースも起きており、事態は深刻だ。

 心不全や脳卒中、腹膜炎などの病態で救急搬送される患者からコロナ感染が判明する事態も起きている。

 都内の感染症指定病院に勤務するC医師は、緊張感を漂わせてこう語った。

「病院側が感染に気付かないケースも起こり得ます。最近、私たちは救急外来やそれ以外の場所でも患者を診たらコロナを疑うようにしている。対処方針は従来と変わりませんが、それだけコロナが隠れている可能性があるということ。院内感染の恐れは十分あり、例えば看護師が感染した場合、ケアを受ける患者すべてに感染の危険がある。日本は検査が不十分なので、どこに感染者がいるのかわからないのが悩ましい」

 この医師は院内感染を防ぐためには、やはりPCR検査を拡充することが効果的だと強調する。

 都内の別の感染症指定病院の医療従事者Dさんも、院内感染の恐怖を口にする。

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