「指定病院と言っても感染症専用の陰圧室は結核用の2床だけ。現在10人程度の患者がいてまったく足りず、フロア全体を立ち入り禁止にして対応しているが完全な隔離とは言えない状況です。防護服もなく、感染防止に効果があるN95マスクも週一つ。医師や看護師は普通のサージカルマスクに白衣、ゴム手袋で患者と接している。いずれ院内感染が起きるし、今後、海外のように患者が押し寄せたら、さらに感染を広げてしまうでしょう」

 都内で内科などのクリニックを開業するA医師は、迫りくる危機を打開するには国が思い切った策を打ち出すしかないと語る。

「検査がパンクしているなら、政府が『陽性の疑いのある人も、おとなしく家にいてください』と要請するしかない。独居の高齢者が増加している状況を踏まえ、食事の宅配は公的支援するくらいの施策を打ち出さないと感染の拡大は止まらないと思います。現場の力に任せられても、もうどうしようもない」

(本誌・亀井洋志、岩下明日香/高鍬真之、今西憲之)

週刊朝日  2020年4月24日号より抜粋

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら