3月26日午前10時ごろ、都内のスーパーでは開店前から客が列をなした/(c)朝日新聞社
3月26日午前10時ごろ、都内のスーパーでは開店前から客が列をなした/(c)朝日新聞社

 東京都の小池百合子知事が3月25日夜に、新型コロナウイルスについての緊急記者会見を開いた直後のことだった。仕事帰りにスーパーに足を運ぶと、いつもとは違う光景が……。

「午後8時過ぎからでした。急にお客さんが増えてきたと思ったら、お米、カップ麺、乾麺、缶詰、精肉、レトルト食品、冷凍食品など保存がきく食品から順に、次々に棚が空になっていきました」

 東京都中野区内にあるスーパーの店員は、疲れた表情でそう話し、続けた。

「小池知事の記者会見があったのは後で知りました。何度も『感染爆発 重大局面』なんて書かれたフリップを掲げながら真顔で言えば、そりゃ、誰もが不安になりますよ」

 午後10時を少し回ったころ。いつもならレジには並んでも数人程度だが、15人以上が列をなし、平日の夜なのに、どの客もカゴいっぱいに商品を入れていた。

「本来、午後9時から夜食を兼ねた休憩時間なんですが、商品の補充に追われて休憩どころじゃありません。夜食も抜きですよ」(前出の店員)

 小池知事は会見で、

「今週になりまして、オーバーシュート、感染爆発ですが、この懸念がさらに高まっています。今、まさに重要な局面で御座います」

 などと述べ、都内で一日に41人の感染者が出たことなどを説明。平日昼間の自宅でのリモートワークや、夜間の外出自粛を呼びかけた。週末については、

「お急ぎでない外出は、ぜひとも控えていただくようにお願いを申し上げます」

 と強い口調で要請した。

「即、ロックダウン(都市機能の封鎖)ということはない」と首都封鎖については否定したが、町では不安に駆られた都民が、食料品と日用雑貨の買いだめに走った、というわけだ。

「4、5日前からようやく供給が追いつき、いつでも買える状態に戻ったティッシュペーパーも、夕方は40パックほどあったのにすぐに消えてしまいました」(前出の店員)

 他には、牛乳、パン、納豆の棚が空に。東日本大震災直後のスーパーを思い出した。

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店に来ていた20代前半の姉妹は