福島第二原発=2017年1月 (週刊朝日2020年3月13日号より)
福島第二原発=2017年1月 (週刊朝日2020年3月13日号より)
図は資源エネルギー庁の資料から (週刊朝日2020年3月13日号より)
図は資源エネルギー庁の資料から (週刊朝日2020年3月13日号より)
廃炉のコスト (週刊朝日2020年3月13日号より)
廃炉のコスト (週刊朝日2020年3月13日号より)

 東日本大震災時に事故を免れた東京電力福島第二原発(福島県富岡町、楢葉町)の廃炉に4千億円以上の費用と半世紀近い時間がかかることがわかった。全国の原発の再稼働や維持、廃炉に費やすコストはおよそ13兆円。すべては国民負担として跳ね返ってくる。改めて原子力のコスト高が明らかになった。ジャーナリストの桐島瞬氏が、その理由を取材した。

【図版】原子力発電所の現状や廃炉のコストなどのデータはこちら

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 東京電力によると、福島第二原発4基の廃炉に伴う費用の総額は約4千億円。内訳は解体費用約2800億円に核燃料の処理費用が約1200億円。廃炉作業の着工から完了まで44年かかる見通しだ。

 廃炉が決まった福島第一原発(福島県大町、双葉町)を除く全国18基の解体にかかるのは9千億円前後。単純計算で1基当たり500億円だ。全体のコストに占める廃炉の解体費用は1割以下とはいえ、経済的に何も生み出さないものにこれだけ費やす必要がある。しかも核燃料の処分費用は別枠だ。

 原発技術者は、原発の解体作業そのものはローテクだと口を揃(そろ)える。それがなぜ、こんなに高くて時間もかかるのか。元化学プラント技術者で原発の解体にも詳しい筒井哲郎氏は、全ては放射能のせいだという。

「石油製油所など一般のプラントを解体するには、1年もあれば十分。みるみるうちに壊していきます。しかし、原発は放射能を帯びている場所があるため、簡単に人が近づけない。そのため、解体作業の最初のほうで核燃料を搬出し、周辺設備の解体、原子炉などの解体、建屋の解体と続いていきます」

 すでに燃料を抜き取った後でも、原子炉の圧力容器などは強い放射能を帯びている。人が作業できるようになるのはおよそ30年後だ。

「炉内のコンクリートにしても汚染度を測定し、高い部分は表面を数センチ削り取る。そうして細断したものを放射能の強さによって分類し、高レベル廃棄物は鉄の箱に入れて長期間保管します」(筒井氏)

 手間と時間と費用がかかる作業だ。これが事故を起こした原子炉となると、廃炉作業の難しさはケタ違いになる。

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