だが、大島氏は発電コストを(1)発電事業に直接要するコスト(2)「技術開発」と「立地対策コスト」からなる政策コスト──に分類。1970~2010年の平均で電源別の発電コストがいくらになるかを計算したところ、原子力がキロワット時当たり10.25円で最も高く、火力が9.91円、水力が7.19円だった。

 これらには原発事故が起きたときに必要となる賠償や収束コスト、使用済み燃料の処理に必要なコストは含まれていない。つまり、実際には原子力のコストはさらに上昇することになる。

「福島第一原発事故以降、安全対策を加味した原発の新設費用は1基1兆円ぐらいかかる。事故リスク対応費などを含めれば、原発の発電コストは17.6円以上になります。原発で作られた電気は国が説明するのとは違い、圧倒的に高いのです」(大島氏)

 しかも今年4月から電気の利用者が払う託送料金の中に、賠償負担金と廃炉円滑化負担金が上乗せされる。電力事業者が原発を早めに廃炉にした場合、未償却分を送電線使用料に転嫁できるのだ。

「託送料金から負担金を取ると、新電力から再生可能エネルギーだけ買っている消費者も一律に払わざるを得ないことになります。本来なら原子力事業者の積立金が不足しようが、最後まで自分で支払うべき費用。こうした重要なことを国会議論ではなく、省令で決めることができるような仕組みになっていることが問題です」

 大島氏が続ける。

「こんなおかしな制度が次々に出てくるのは、原子力を維持しようとする考えが政策の根底にあるため。日本の原発は後になって正確な値段がわかる。そんなエネルギーはありません」

 原発は安いエネルギーなどという説明にだまされてはいけない。

週刊朝日  2020年3月13日号