東日本大震災から9年の月日が経った今も福島第一原発の事故には疑惑が残っている。ジャーナリストの桐島瞬氏が取材した。
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福島第一原発の事故では1、3、4号機が水素爆発を起こし、大量の放射性物質が大気中に拡散した。だが、3号機は核爆発だったのではないかとの疑惑がある。実際、3号機が爆発した瞬間には黒煙が舞い上がり、白煙が立ち上った1号機とは様相が違った。
「3号機で核爆発が起きた」と主張する原発技術者は何人かいる。そのなかで最も詳しく解説しているのが、三菱重工業で原発の設計技術者を務めた藤原節男氏(70)だ。
「3号機の爆発では原子炉建屋南側で一瞬オレンジ色に光り、黒いキノコ雲状の煙が上空600メートルまで立ち上りました。これは温度が1万度以上の高温になる核爆発の特徴です。大きな被害が出なかったのは、爆発の規模が原爆の1万分の1から10万分の1程度と小さかったからです」
藤原氏は3号機が核爆発した証拠として13個の根拠を挙げている。以下が主なものだ。
・屋根フレームの鉄骨が飴細工のように曲がった。爆発で建屋のスレート屋根が吹き飛び、圧力が外部に逃げたにもかかわらず曲がっているのは、核爆発で局所的に超高温部が発生したために起きた現象。
・使用済み燃料プールのある建屋南部を中心に屋根が破壊された。水素爆発なら最上階の5階に充満した水素が爆発するため、屋根はある程度均等に破壊される。
・5階の床付近に置かれていたクレーン用モーターなど大型瓦礫(がれき)がキノコ雲から落下したようだ。5階空間での水素爆発なら、5階の床付近に置かれたものを上空高く吹き飛ばすことはできない。
・プルトニウムが福島県飯舘村や米国まで飛散しているが、これは使用済み燃料プールの燃料の金属成分が蒸発したもの。水素爆発ならプルトニウムの発生源は格納容器内の炉心溶融物(コリウム)に限定されるが、その場合のプルトニウムは二酸化物のままの状態を保っていることから蒸発飛散しない。