林:だけど美輪さんは別格というか、若い人が批評したりする対象ではないですよ。「あんたたち、畏れ多くて口をはさめないだろう」と私なんかは思いますけどね。

美輪:いや、ねたみ、そねみは昔からありますからね。私なんかレパートリーを広げすぎちゃって、フランス語でシャンソンを歌ってるかと思うと、「雪之丞変化」で女形をやったり、闇太郎という盗賊の親分をやったり、「ヨイトマケの唄」でシンガー・ソングライターを始めたり、女だか男だかわからない服装で、いろいろやりますでしょ。そうすると、いろんなジャンルでねたむ人がいるんですね。「あなたも好きなようにおやりになればいいでしょう?」という気持ちでいますけど。

林:若い俳優さんが、美輪さんからいろんなものを学びたいと思って共演するでしょう。そういう人に何か教えてあげたいという気持ちはおありなんですか。

美輪:ないですね。私もいつの間にか年をとって、前首になってるので、それを直さなきゃと思ってるんですけど、若い人がそうなってるのを見ると、注意してあげたりはします。注意すると若い人はすぐ直しますね。

林:若い俳優さんに、「うちにいるときにロックとか聴かないで、クラシック音楽を聴きなさい」と言って教えてらっしゃるそうですね。

美輪:ロックを聴いてもいいんだけど、ロックだけだと、ロックという雰囲気が漂ってくるんです。渋谷あたりを歩いてる人でも、クラシックを聴いたり邦楽を聴いたりしてる人っていうのは、いかにもそういう雰囲気が体じゅうから漂っていて、「お!」と思うんですよね。

林:今テレビをごらんになってて、この人と一緒にお芝居やりたいなと思うような人って、いらっしゃいますか。

美輪:皆さん芝居がうまくなってるし、きれいですよね。みんな背が高くなってるし、顔立ちもきれいだし。昔だったら大変な騒ぎになるような美男美女が、掃いて捨てるほど出てきてますでしょ。芝居もそこそこうまいですしね。細おもてであごがとがってる顔が、いま流行なんですね。年配の人でも、背が高くてあごが細くてうりざね顔の男女が、そのへん歩くとゾロゾロいますね。ずいぶん変わったなと思います。

(構成/本誌・松岡かすみ、編集協力/一木俊雄)

週刊朝日  2020年2月21日号より抜粋