林:テレビの次の時代を担うお二人が出会ったときは、「おっ、デキる」とお互いに思ったんですか。

橋田:いや、石井さん、すごい冷たい顔して「好きなもの何でも書いてらっしゃい」と言うんですよ。それで「袋を渡せば」というホームドラマを書いたんです。亭主の月給の半分は女房のものだというドラマなんですけど、石井さん、「これは『七人の刑事』を撮ってる演出家には撮らせられない」と言って、演出家を代えたんです。それから「七人の刑事」を書けなくなって……。でも次にお仕事をくださったのが「愛と死をみつめて」だったんです。

林:あれを見て泣きましたよ、私。

橋田:そう考えると石井さんのおかげが大きいですね。石井さんに会わなかったら、また男の人にいじめられてダメになってたかもしれない。

林:映画界でいじめられて追い出された先生と石井さんがタッグを組んだのが、今日のテレビ業界の隆盛を生んだわけですね。

橋田:そんなに大げさなことじゃないですけど、石井さんとはいろいろお仕事をさせていただきました。だから「石井さんに血を替えられた」と言ってるんです。テレビと映画はぜんぜん価値観が違いますからね。映画は嫌いです。映画はセリフをいかに短くするかですけど、私は一つのセットの中で長い長いセリフを言ってるほうがいいです。

林:先生のセリフってほんとに長いらしいですね。

橋田:はい。映像を信じてないんです。テレビというのはラジオだと思ってるんです。朝なんか女の人は何か家事をやりながら見てるじゃないですか。だからセリフが長くなるんです。また連続ドラマだと、その回を見逃すと、次の回にちょっと説明しなきゃならない。そうするとまた長くなるんですよね。

林:映画だといちばん偉いのは監督さんだと思いますけど、テレビは女性の地位も高かったわけですね。

橋田:石井さんだから女のライターを見つけて使ってくださったんだと思います。石井さんがいなかったら私はやめてたかもしれません。

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