早稲田大学校友会が企画・運営する「稲門祭」の様子。多くの卒業生やファンが集まる=同会提供
早稲田大学校友会が企画・運営する「稲門祭」の様子。多くの卒業生やファンが集まる=同会提供
2019年新年会で肩を組みながら歌う早稲田大学グリークラブOB会メンバーら=同会提供
2019年新年会で肩を組みながら歌う早稲田大学グリークラブOB会メンバーら=同会提供
2017年にできた早稲田大学中国校友会=早稲田大学校友会提供
2017年にできた早稲田大学中国校友会=早稲田大学校友会提供
早稲田大学のシンボル、大隈記念講堂=撮影・多田敏男
早稲田大学のシンボル、大隈記念講堂=撮影・多田敏男

 早稲田大の卒業生の気質として語られてきたのが「群れない」こと。同窓会を開いても集まりが悪いとされ、永遠のライバル、慶應義塾大の「慶應三田会」と対比されてきた。そんな状況が変わりつつある。

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「いま卒業生たちが校友会活動に積極的に動いてくれています」

 こう話すのは早稲田大の三木省吾校友会事務局長だ。

 64万人いる校友会会員(卒業生)の受け皿になっているのが校友会支部や稲門会(とうもんかい)だ。卒業年次ごとの年次稲門会や、企業・業種別の職域稲門会、地域稲門会など1380団体に上る。数の上では、慶應大の卒業生数38万人、同窓会団体数870を超えている。

「婚活パーティーや経済的に厳しい子供向けに無料の塾を開いたり、地域貢献に取り組んだりするなど活動は多様です。自ら汗を流すのが早稲田卒業生の特徴。稲門会の活動を楽しみながら、社会貢献している人も多いです」(三木事務局長)

 大学同窓会で最強とされてきた三田会とは比較されがちだ。稲門会の関係者は三田会から学ぶものが多いというが、近年では三田会側が稲門会側から学んだ取り組みもある。

 早稲田大学グリークラブ(通称:ワセグリ)は、1907年創設の伝統的な男声合唱団だ。会員は1500人いて、“歌い足りない”OBらも集まる。OB会幹事長の佐々木豊さん(84年卒)は、「活動は大変だが充実感がある。自分を元気づけることにもつながっています」という。

 ワセグリのOB会が力を入れているのが現役生の支援。合唱人口が減って部員が伸び悩んでいるため、新入生を勧誘する時期などに“軍資金”として70万を援助している。

「現役部員が新入生に気前よくおごれるように、という狙いがある。この話を慶應の合唱団OBにしたら、『負けてはいられない』と言って現役支援活動を始めたようです」(佐々木さん)

 2019年9月にはワセグリの48人の学生が、中国・上海で現地の合唱団との交流演奏会を行った。その時の旅費をOB会などで募ったところ、250万円の目標に対し400万円を超えた。OBで早大元総長の白井克彦さんも寄付したという。

「OB会費というとなかなか払ってもらえないが、現役生を支援するためなら出してもいいという人は多い。今後は学生の声も聞きながら、さらに支援を強めていく予定です」(同)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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稲門会の先輩が現役生の就活支援