こうした卒業生らの動きを大学側も歓迎している。いま大学の校友会が取り組むのは資金力の強化だ。

 校友会では、自動的に会費を徴収する仕組みを整えている。卒業年次の最終学期に、10年分の会費として4万円を学費とともに徴収。クレジットカード会社と連携して「早稲田カード」をつくり、会費が自動的に引き落とされる仕組みもある。こうしたやり方で、年間約6億円以上が集まるという。

 会費は校友会活動や運営費のほかに、奨学金として約2億5千万円が使われている。授業料の半額を免除する給付型の「めざせ! 都の西北奨学金」などに当てられる。前出の三木事務局長はこう振り返る。

「『めざせ! 都の西北奨学金』は当初、一律で40万円を給付する奨学金でしたが、所属学部によっては授業料の半額に届かなかった。早稲田の後にできた慶應大の奨学金の方が高額であったことから、卒業生から『後出しジャンケンに負けている。支援するから金額を上げろ』という声が上がったのです。現役生を思いやる卒業生は非常に多い」

 校友会費だけでなく寄付金を集める力も強い。18年12月に完成した「早稲田アリーナ」には、卒業生を中心に22億円以上も集まった。07年に創設125周年を迎えた際には200億円以上が寄付された。

 近年は大物OBからの寄付も目立つ。「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの創業者、柳井正会長兼社長は政治経済学部の卒業生だ。

 最近では「早稲田大学国際文学館(通称・村上春樹ライブラリー)」に伴う改築の費用約12億円を、柳井氏が全額寄付することが決まった。13年にも国際学生寮の建設費として3億円を寄付している。

 いま大学が目を向けるのが留学生。中国や台湾、韓国といったアジア出身の卒業生からも寄付を呼び込みたい考えだ。

 早稲田大は歴史的にアジアから多くの留学生を受け入れている。1947年には韓国校友会、50年には台湾校友会、そして2017年には中国校友会ができた。現地で成功している経営者もいて、これまでに30億円ほど寄付した人もいるという。早稲田大国際部東アジア部門長の江正殷さんはこう期待する。

「稲門会の留学生ネットワークは慶應三田会にも勝る。お金を出すだけではなく、現地で頑張っている人も支援しています。中国でハンセン病の元患者らを助ける早大出身の原田燎太郎さんも、支援を受けて活動している。早稲田の卒業生は、みんなファミリーなんです」

 国内外にネットワークを広げる稲門会。群れる早稲田卒業生が増えれば、慶應三田会を超える日が本当に来るのかもしれない。

(本誌・吉崎洋夫)

※週刊朝日オンライン限定記事

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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