キャッチボールする楽天の松井裕樹(C)朝日新聞社.
キャッチボールする楽天の松井裕樹(C)朝日新聞社.
楽天の松井裕樹(C)朝日新聞社
楽天の松井裕樹(C)朝日新聞社

 驚いた野球ファンは多いのではないか。昨オフに楽天の守護神・松井裕樹が4年の大型契約を結ぶと共に、先発への転向を表明した。昨季38セーブで初の最多セーブ投手を獲得。球界を代表する抑えが、先発に回った背景は何だったのだろうか。

【ファンが選んだ平成で最もカッコいいバッティングフォームはこの選手!】

 地元テレビ局の担当記者はこう語る。

「松井はDeNAの山崎康晃のように生粋のリリーフ投手ではない。将来のエースとして入団してきて、チーム事情で守護神に配置転換された経緯があります。本人は『いつか先発に戻りたい』思いはあったと思います。また、若手の先発投手が育っていない現実もあります。チームの将来を考えた時にこのような決断になったのだと思います」

 松井が全国に名をとどろかせたのは神奈川・桐光学園高の2年時、2012年夏の甲子園だった。愛媛・今治西高戦で大会史上最多の10連続奪三振と1試合22奪三振をマーク。1大会通算68奪三振は夏の甲子園で左腕投手の史上最多記録となった。

 5球団競合のドラフト1位で楽天に入団した際も「田中将大の後継者」として期待が大きかったが、チーム事情で14年オフに先発から抑えに転向。これがピタリとハマった。高次元の直球、スライダー、チェンジアップにバットが空を切る。昨季の三振奪取率は13.82で、驚異的な数字がすごさを物語っている。昨年に史上最年少の22歳10カ月で通算100セーブを達成した。

 松井の最後の先発は、救援で不調だった18年10月4日の日本ハム戦(楽天生命パーク)だった。6回4失点で黒星が付いたが、球団タイ記録の7者連続三振をマーク。先発でも十分に通用することを証明した。ただ、不安要素がないわけではない。制球が抜群に良いとは言えず、三振を取る投球スタイルのためどうしても球数がかさむ。1試合で何度も対戦する打者の目が慣れたら簡単に空振りは奪えない。完投するには「少ない球数」で打たせて取る投球技術も求められる。松井も自覚しており、カーブや大きいスライダーの改良を新たなテーマに掲げている。

 楽天で昨季規定投球回数に到達したのは、ロッテにフリーエージェント(FA)移籍した美馬学のみだった。先発陣を見渡すと、岸孝之が35歳、則本昂大が29歳、石橋良太が28歳、ロッテからトレードで獲得した涌井秀章が33歳。ドラ1右腕の藤平尚真、安楽智大、近藤弘樹ら若手投手たちが伸び悩んでいるチーム事情もある。松井はまだ24歳。左腕エースとして結果を残せば、悲願のリーグ優勝にグッと近づくだろう。(梅宮昌宗)

※週刊朝日オンライン限定記事