レバノンで会見し質問を受けるカルロス・ゴーン被告。右は逮捕状が出されたゴーン被告の妻キャロル・ナハス容疑者 (c)朝日新聞社
レバノンで会見し質問を受けるカルロス・ゴーン被告。右は逮捕状が出されたゴーン被告の妻キャロル・ナハス容疑者 (c)朝日新聞社
会見で資料を示すカルロス・ゴーン被告 (c)朝日新聞社
会見で資料を示すカルロス・ゴーン被告 (c)朝日新聞社
ゴーン被告の会見に集まった各国の報道陣 (c)朝日新聞社
ゴーン被告の会見に集まった各国の報道陣 (c)朝日新聞社
ゴーン被告の主張に反論した検察庁=撮影・多田敏男
ゴーン被告の主張に反論した検察庁=撮影・多田敏男

 日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(65)は、逃亡先のレバノンで無実を主張する会見を開いた。日本の司法制度や一部の日産経営陣を名指しで批判し、国際世論に訴えかける戦略だ。東京地検はすぐに反論を公表したが、国際的にはゴーンを支持する声もあり、日本政府は対応に苦慮している。

【写真】ゴーン被告が名前をあげた日産の西川前社長

「一握りの悪意に満ちた人たちが私を攻撃しました。日本の検察と一部の日産幹部による策略によって計画されたものです」

 ゴーン被告は日本時間の1月8日深夜、レバノンの首都ベイルートでこのように語った。公の場で発言するのは逃亡後初めてで、各国の報道陣を前に自らの正当性を繰り返した。

 事件に関わった日産幹部として、6人の実名を挙げた。西川広人前社長、ハリ・ナダ専務執行役員、豊田正和・社外取締役、川口均前副社長、今津英敏元監査役、大沼敏明元秘書室長。これらの人たちが中心となって、ゴーン被告を会社から追い出したという。

 経済産業省の元経済産業審議官で日産に天下っている豊田正和氏については、「日産と当局との橋渡しをしていた」と主張した。

 日産側は社内調査で不正が発覚したもので、経営トップを追い出すために仕組んだものではないとの立場だ。これに対しゴーン被告は、日産幹部と検察が協力し事実上の“国策捜査”が行われたと主張した。ゴーン被告側は経産省も関わっていることも示唆しているが、会見では経産省幹部らの実名は公表されなかった。

 裁判も受けずに逃げたゴーン被告が国策捜査だと訴えても、多くの日本人にとっては違和感がある。だが、世界的に有名な経営者だったゴーン被告の発言には、いまも大きな影響力がある。東京地検特捜部に逮捕され、「人質司法」とも呼ばれる長期拘束を受けていたゴーン被告が、やっと“真実”を語れるようになったと支持する人もいるのだ。

 元特捜検事の郷原信郎弁護士は、日本政府は世界から厳しい目で見られているという。

「日産経営陣と経産省と検察が結託し、カリスマ経営者を犯罪者として葬ろうとしていたと国際的には見られているのです。日本の刑事司法に対する批判が高まるなか、ゴーン被告の主張に反論するのは簡単ではありません」

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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「金の卵を産む鶏」である日産を手放したくないフランス側