鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中
鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)が好評発売中
※写真はイメージです (Getty Images)
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 放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「『鬼滅の刃』」について。

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 久々に漫画でとてつもないムーブメントが起きてる。「週刊少年ジャンプ」で連載中の「鬼滅(きめつ)の刃」である。2016年から連載を開始して、現在18巻。アニメ化により人気が爆裂したようだ。周りで「きめつ」の3文字を聞くことが多くなったので、僕も読んでみた。正直、ヒット漫画を読むときは、「そういうものを読んでいるおじさんでありたい」と思って、「確認」で読んでいる自分もいる。が、「鬼滅」は5巻あたりから、毎週月曜日発売のジャンプをただ楽しみにしていた自分に戻してくれた。

 この興奮は、「ONE PIECE」のクロコダイルあたりを読んでいたとき以来の興奮。この連載を読んでいる方だと、名前は知っているが読んでないという方も多いと思うので、超簡単にあらすじを。「鬼対人間」。大正時代を舞台に、主人公「竈門炭治郎(かまどたんじろう)」が「鬼」と呼ばれる敵に家族を殺され、さらに唯一生き残った家族の妹が鬼にされてしまい、その妹を人間に戻すために、戦っていくのだ。

 とにかくテンポが速い。従来のジャンプ漫画よりもかなりテンポが速い気がする。炭治郎が強くなっていくさまを「覚醒」として見せているが、そのスピードも速い。このスピード感と、そして、従来のジャンプ漫画ではありえなかったような展開がある。

 単行本8巻で「えーーー!?」と思うようなことが起きてしまう。このような展開にするのはかなり勇気がいることだと思うのだが、作者・吾峠呼世晴さんの決断も凄(すご)いと思う。スピード感、今までのジャンプだったらありえなそうな展開。そして、読んだ人が必ず言うのが、悪役への感情移入である。敵の「鬼」はみなもと人間である。わけあってみんな鬼になったのだ。

 物語の中で、敵の強い鬼がやられた後、もしくはやられ際で、その鬼がなぜ鬼になったのか?という回想が入る。みんな必死に生きていた。幸せに生きようと思っていた。なのに、鬼になるしかなかった。その「事情」が描かれることで、悪役に対してとてつもない情が湧く。これにより大人の心もぐっとつかむ。職場で嫌われてる上司だってそうなった理由があるのだから。

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鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。

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