(C)榎本まみ
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 新卒で督促業界に入ったOLが、毎日、怒鳴られ、脅されながら、年間2000億円の債権を回収するまでを描き15万部のベストセラーとなった「督促OL修行日記」(文藝春秋刊)。その後も都内のコールセンターに身をひそめ、スキルと経験を積んでパワーアップした督促OLがクレーマー、カスハラ(カスタマー・ハラスメント)に逆襲する術を伝授する。

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 顧客が従業員に無茶な要求をしたり、精神的苦痛を与えたりする行為はカスタマーハラスメントと呼ばれ大きな問題になっている。こうしたカスハラを行うお客様に共通しているのは、「自分はお客様だから大切にされて当然」という歪んだ認識だ。

 先日どうしても対応できないような無茶なクレームを断っていたら、お客様に「目上の者に向かってなんだその態度は!」と怒鳴られた。その時ふと、なぜこのお客様が自分を目上の者だと認識しているのだろうと考えて、そうかこのお客様は「顧客=偉い」と思っているのだな、と思い至った。

 そして同時に疑問に思った。お客様は神様ですというフレーズに象徴されるような「お客様」=「偉い」という認識は、どこから来たのだろうか。そして、それは本当に正しいのだろうかと。

 この認識は私たちが最初からを持っていたものではなく、徐々に刷り込まれていった、また歪まされていったものだ。
 
 私が会社に入社したての頃に受けた新入社員研修で、こんな一幕があった。外部から来た研修講師が新入社員に向かって「あなたに給料を払ってくれるのは誰ですか?」と聞く、指名された社員が「会社です」と応えると「それは違います、あなたにお給料を払ってくれるのはお客様です」と研修講師は訂正し、「だからお客様を大切にしましょう」というまとめに持っていった。

 この話を聴いたときは、なるほど確かにそうだなと納得した。また、それから読んだビジネス書の何冊かには「顧客をお客様と呼ばない会社はダメになる、社内でもお客『さん』などと呼ばず必ず『様』付けで呼ぼう」というようなことが書いてあった。

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「お客様は神様」はいい会社?