つまり現代の日本社会においては「お客様を大切にする会社=良い会社」と認識されているのだ。確かにそれは間違いではないと思うし、「従業員」の立場に立っているときに「お客様」を大切にしようと思い接客することはサービスの向上に繋がる、良いことだ。

 けれどその認識を持ったまま「お客様」側に立ってしまった時、問題は起こってしまうのだ。

「お客様を大切にする会社は良い会社」を反転させると、「お客様を大切にしない会社は悪い会社」になる。そしてお客様=自分、なのだから「自分を大切にしない会社=悪い会社」となる。

 自分を正義だと思っている人は時に容赦なく相手を攻撃する。

「悪い会社は俺が正してやらなければならない」という正義の元に、お客様は従業員に向かって怒る。恫喝しながらクレームをつけ「迷惑をかけた分どうやって償うんだ!」と叫ぶ。申し訳ないがそれには対応できないと言うと「こんなことも出来ないなんてダメな会社だ! どうにかしろ!」と言い、それでも断ると「お前では話にならない! このダメ社員が! 上の者を出せ!」と激高する。

 お客様は「顧客を大切にしない会社=ダメな会社」という認識を元にしているので、少しでも自分が「大切にされていない」と感じると怒る。
自分の要求する期待値を下回った時に激しく怒り、指導と言う名の過剰要求をしてくる。「俺が認めるサービス」にまで改善できないのは怠慢で、俺はお前らの会社を良くするために怒ってやっているんだという歪んだ認識の元でお客様は堂々と怒る。

 謝罪を受ける、補填をされる、要求が通る……つまり、「自分が大切にされている」と自尊心が満たされるまでお客様の要求は続いていく。

 しかし、お客様は自分の正義に基づいて行動をしているかもしれないが、会社側からすればその人はまぎれもないクレーマーなのだ。

 近年、コールセンター業界では重篤なクレームに対しては弁護士対応を行うセンターが増えてきた。一度電話をかけて何時間もオペレータを怒鳴るような顧客は、弁護士に委任し対応を行うのだ。一度弁護士対応になれば、お客様から電話がかかってきてもコールセンターでは「○○弁護士へご連絡下さい」と言って電話を切ることができる。

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クレーマーの末路は?