ただ、この人の物語の泉は枯れることがないだろう。デビューまもない頃聞いたペンネームの由来を、記者は忘れられない。

「まかて」とは、36歳で娘5人を残して世を去った祖母の名からいただいた。沖縄出身だ。一言では言いがたい思いを残して逝った人の心も込め、小説をこれからの「人生の芯」にしたい。淡々と、しかしきっぱりと語っていた。

 独りで書いているわけではないのだ。

 デビューから11年の心境は……

「ラッキーな女と言われます。そのとおりと思います。だからその運に応えるためにも、守りの姿勢はとらない。いつも挑んでいたい」

 きょうも朝井は透明な存在と化し、いろんな時代を渡り歩くのだろう。持ち前の好奇心を発揮し、どこかの町角できょろきょろしながら。=敬称略(本誌・木元健二)

THIS WEEK
10月28日(月)
かかりつけの鍼灸師のもとへ。お昼に若布蕎麦を食べ、帰宅。新たに始める連載小説に着手するもタイトルと冒頭に苦しみ、さほど進まず。夕食は残り物。
10月29日(火)
秋雨が冷たい。雑誌の連載原稿の校正ゲラを確認。遅い昼食後、昨日の原稿の続きに取り組む。さほど進まず。夕食は豚しゃぶ(夫、作)。
10月30日(水)
ストーブを出さねばと思いつつ、原稿執筆。少し進む。夕食は鶏の塩焼きと根菜の温サラダ(夫、作)。
10月31日(木)
原稿執筆。ストーブ、出せず。夕食はおでん(夫、作)。
11月1日(金)
原稿執筆。やっと目鼻がつき、ストーブを出す。夕食はお好み焼き(外食)。
11月2日(土)
新幹線で東京へ。いくつかのインタビューと打ち合わせ。銀座の日本料理店で編集者さんと夕食後、ホテルで読書
11月3日(日)
サイン本作成のために、朝から新聞社へ出向く。午後は、自作にかかわる講演を聴きに神楽坂へ。夕方、移動して取材を受け、遅い新幹線に乗る。ハンバーグ弁当を車中で食べ、新大阪まで本を開いたまま眠りこける。

週刊朝日  2019年12月6日号