■亡くなる直前の年金も請求する

 一方、「死亡一時金」は、国民年金の保険料を36カ月以上納めた人が、老齢基礎年金も障害基礎年金も受け取らず亡くなったとき、その人と生計を共にしていた遺族に支払われるもの。受け取りは、死亡日の翌日から2年以内に限られている。

 この二つはどちらかしか受け取れない。

 意外と忘れやすいのが、亡くなる直前の年金請求だ。死亡届を出した時点で年金支給は止まる。最後の年金は「未支給年金・保険給付請求書」を年金事務所に提出し、受け取ろう。

 企業年金もお忘れなく。社会保険労務士の假谷美香さんは、こう話す。

「401k(確定拠出年金)など、故人が自分で運用していた年金などがあるケースがあるので、夫の死後は、そのあたりをしっかり調べて請求をするなど所定の手続きをしたほうがいい」

 企業型確定拠出年金に加入している場合、亡くなったときに現役の会社員であれば会社側が手続きをするが、引退して個人型確定拠出年金(iDeCo)に資産を移管して運用を継続していた場合は、個人の管理のもとになる。妻がわからずに慌てることもありえる。

「確定拠出年金は60歳から70歳までの間に受け取りを始めればいいのですが、中には受け取りを先送りにして運用している人もいます。その場合、家族に言っておいた方がいい。もし夫が現役の会社員で会社主催のリタイアメントセミナーがあれば、夫婦で参加する。夫の会社の退職金制度や受け取りの選択肢などを事前に知っておくだけでも、老後のキャッシュフロー表を作る上で参考になります。それを作ると、金額が見えてきますから、意外と大丈夫、と安心することもありますし、不足だな、と思えば対策も立てられる。作る時は一人になった時のキャッシュフローも作っておきます。それが没イチの備えです」(確定拠出年金アナリストの大江加代さん)

 あなたか、あなたの伴侶のどちらかが「没イチ」になる。なってから慌てぬよう、もらえるお金の詳細は把握しておこう。(本誌・大崎百紀)

週刊朝日  2019年11月29日号