高田勇紀夫さんは『じーじ、65歳で保育士になったよ』という本も上梓した (撮影/伊ケ崎忍)
高田勇紀夫さんは『じーじ、65歳で保育士になったよ』という本も上梓した (撮影/伊ケ崎忍)
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「人生100年時代」をどう過ごすか。総務省調べによると、昨年の65歳以上の就業者数は862万人。就業者総数の12.9%と過去最高になった。どんな仕事に就いたら、満足度の高い第二の人生を送ることができるのか。現役時代と全く違った分野に飛び込んでしなやかに活躍する人たちもいる。

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 65歳で保育士になり、都内の認可保育所で働いて3年目なのは高田勇紀夫さん(67=豊島区)だ。

「まさか自分が保育士になるなんて、4年前まで想像もしていませんでした」

 2015年の秋、新聞で保育所の待機児童に関する記事を読んだのが発端だ。

 保育所の数が大幅に足りない。子どもが保育所に入れないため、働けない母親が大勢いる。最初から出産を諦める夫婦までいる──。そう報じる記事だった。その日から待機児童問題を意識し、新聞や雑誌に目を通す。若い親たちの悲痛な声が聞こえてきて、それほど深刻な問題になっているのかと衝撃を受けた。「保育園落ちた日本死ね」という言葉が、新語・流行語大賞のトップ10に入る前年である。

「微力ながら待機児童問題の解決の一助になりたいと思ったんです」

 妻に打ち明けると、「あなたに務まるはずがない」とにべもなかった。無理もない。高田さんは、定年まで日本アイ・ビー・エムの猛烈社員だった。部下100人を持つ部門長まで昇った。若い頃、育児は専業主婦の妻に任せっきりだった。「夜泣きの子をあやしたこともなかったでしょ」と言う妻にぐうの音も出なかったが、「だからこそ、家族への贖罪(しょくざい)の気持ちを込めて、保育士になる」。

 国家試験に受からなければならない。比較的安価な通信講座を利用することにし、段ボール箱いっぱいの教材が届いたのが、15年12月。翌16年4月の試験で保育原理、児童家庭福祉、子どもの食と栄養など全9科目に合格することを目標に「1日にテキスト10ページをマスターする」と計画を立て、連日8時間近く猛勉強した。

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