ところが、ある日、AさんはK副所長から警備犬で町長を襲撃したいという相談を受け、仰天したという。

 Aさんの供述調書によれば、<Kは私にこの犬で町長襲撃できないか等ととんでもないことを言ってきたのです><町長犬で殺れんか、犬を放して証拠残らないように殺ってくれんか。町長を殺ってくれたら保証したる>と命じられたというのだ。

 当時、高浜町長だった人物はMOX燃料受入れ、プルサーマル計画には慎重な姿勢を見せており、関電にとっては大きな難題だったという。

 敏腕ドッグトレーナーでもあったBさんは、K副所長に命じられ、町長が飲食に使う酒場を調べたり、尾行するなど、本来の業務とはかけ離れた仕事をしたと供述していた。

「高浜町の町長選挙があった時です。K副所長やX町議が町長側の陣営が『選挙違反している』などと言い出し、警備犬の仕事をしているスタッフを行かせた。すると、スパイかと疑われて、詰問され、逃げ帰ってきた。それでも、K副所長は知らん顔。Aさんとも話し合って警備犬の業務から手を引くことにした」(Bさん)

 この時、BさんはK副所長と話し合った内容を録音しているが、この録音は裁判でも証拠となっている。

<Bさん 高浜の町長、(町長を襲撃という)ああいうふうな話がありましたわな?>

<K副所長 うん>

 明確に、警備犬による町長への襲撃話を認めているのだ。

 K副所長は同様に供述調書でも<この犬で町長を襲えないか>と話したことは認めていた。

 そしてK副所長は高浜町の町長選挙でBさんらに、町長陣営への「スパイ」活動を依頼した動機について、<町長が、法律で定められた弁当の数を大幅に超過する数を配っている。また、公務員である区長らを動員して弁当を配っているという選挙違反まがいの話を聞きました><公平公正であるべき選挙運動において不正行為が行われる(中略)違反状況を写真に撮ることを思いついた>と述べている。高浜原発の副所長が、地元の選挙、政治に介入していたとんでもない行為を認めているのだ。

 高浜原発のK副所長とAさん、Bさんがこうしてもめた2007年頃、関電側の代理人として登場したのが、森山元助役だった。

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関電代理人として森山元助役が登場