「ゴンドラを揺れないようにするために外壁にレールをつけたりする必要があるが、それができる高い技術を持った会社は少ない」

「風が吹くと作業ができなくなり、工期が長引いてしまう」

 工法面で工事ラッシュに、十分対応できなくなる懸念があるとする見方だ。

 マンション管理大手の三菱地所コミュニティの山崎一乗リニューアル事業統括部長は、どの方式を選ぶかだという。

「確かに一般的なゴンドラだと、風の影響を考えて稼働率6~7割で計算します。監理者が現場に容易に行けないなど、固定足場の場合より多少工事の精度が落ちてしまいます。ただ、安定的な方式もあります。例えばウチが推進している、『連結式ゴンドラ』という、マンションの2フロアをドーナツ状にくるんで作業をする方式です。この方式でタワマンの大規模修繕工事を3棟行ったことがありますが、風で作業が中止になった日は一日もありませんでした」

 タワマンの大規模修繕の実績は一定程度、積みあがってきているようだ。大手管理会社に40階建て以上の大規模修繕の経験を聞いたところ、三菱地所コミュニティが「4棟」、三井不動産レジデンシャルサービスが「7棟」との回答があった。

 工事のノウハウが確立されたとまでは言えないが、大手管理会社にとっては「未経験ゆえの恐怖」は薄れつつあるようだ。

 では、費用面はどうか。

 オラガ総研の牧野知弘氏は、一般のマンションとタワマンをクルマに例えてこう言う。

「一般のマンションを日本車のプリウスとすると、タワマンはポルシェと言っていいでしょう。高級外車のメンテナンスにお金がかかるのは常識です。タワマンを買った人はそれに乗ってしまったのですから、高い維持費用から逃れる術はありません」

 確かに、タワマンの豪華共用施設は「金食い虫」と言ってもいい。

 エントランスを際立たせるオブジェなどの装飾、ホテルのフロントを連想させるコンシェルジュサービス、トレーニングルーム、キッズルーム、訪問者が宿泊するゲストルーム……。これらを備え付けるのは今や常識だろう。

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