「45度までは肩甲骨ではなく、肩関節の力だけで上げることができる。そこから上に持ち上げるときに、初めて肩甲骨の力が必要になります。60度までしか上げられないのは、かなり肩甲骨が硬いといえます。こういう人は肩甲骨はがしが有効です」(同)

 なお、腕が耳につくぐらいまで上がるのに肩がこるという場合、別の病気が隠れている可能性がある。例えば、上腕と肩甲骨とをつなぐ筋が切れた状態の「腱板断裂」だ。また、乳がんや肺がんでも肩がこることがある。こりが日増しに強くなるときは、一度、整形外科を受診したほうがいい。

 セルフチェックで可動域が狭まっているとわかった場合、肩甲骨はがしに挑戦してみよう。やり方は次のとおりだ。

■肩甲骨はがしのやり方

(1)イスに座って背筋を伸ばしたら、肘を曲げて肩の高さまで上げる(立った状態でもOK)。

(2)肘が下がらないよう気を付けながら、ゆっくりと後ろに引いていく。左右の肩甲骨を寄せるイメージ。

(3)後ろに回した肘を3秒ほどかけて下げていき、わきにつける。

 この(1)~(3)の動作を3回繰り返す。これを1セットとして、起床時、昼間、夕方の3回行う。加えて、パソコン作業をしているときなど、肩がこりそうなときにも行いたい。

「ポイントは、肩甲骨を意識しながら回す、です。後ろに回すときに肘を水平より下げると効果が半減しますので気を付けて。初めは正しくできているか、鏡を見て確認しながらやってみるといいでしょう」(同)

 続けていくと可動域が広がり、動きがラクになってくる。そうしたら、肘を水平より高く上げて後ろに回す上級編を試してみよう。

 関節の硬さの程度にもよるが、1カ月ほどで効果を感じられるようになるそう。また、のちほど紹介する「肩こり改善生活」とともに実践すると、より効果が出やすいという。

「まずは信じて、1カ月試してほしい」(同)

 肩こりの予防や改善には、日常で正しい姿勢を心がけることも大切だ。先にも紹介したとおり、肩こりは僧帽筋や肩甲挙筋、菱形筋が緊張したり、硬くなったりするために起こる。原因の一つが、「頭の重さによる筋肉疲労がもたらす負のスパイラル」だ。

 成人の頭の重さは約4キログラムもあり、それを主に支えているのが筋肉だ。

 姿勢が正しいと、頭が首にうまくのっかった状態になるので、筋肉に負担がかからず肩こりになりにくい。正しい姿勢とは、耳の穴、肩の先、骨盤の出っ張り、くるぶしを結ぶラインが直線になっている状態をいう。

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