「普通の日本人が見ている世界は真実から遠くかけ離れた歪んだ世界なのではないか」
9月23日の国連気候行動サミットで安倍晋三総理が発言できなかったのを見て感じたことだ。この出来事について、日本の大手メディアは、当初、「総理の日程の都合がつかなかった」という政府の言い訳をそのまま流したり、あるいは、欠席した理由を伝えないところがほとんどだった。一方、小泉進次郎環境相の「セクシー」発言などは大きく報じ続けた。
報道を見て、今回の安倍総理のサミット欠席が、日本にとって非常に大きな外交上の失点であるということを理解できた国民はどれくらいいただろうか。
実は、このサミット前の9月18日、フィナンシャル・タイムズ紙は、グテーレス国連事務総長が今回のサミットで、気候変動対策に不熱心な主要国リーダーたちの発言をブロックすると報じていた。その記事の中では、ブロックされる国の筆頭として「日本」を挙げている。さらに、グラフを用いて石炭火力発電所の建設計画を有する上位15カ国を並べ、先進国で唯一日本だけが含まれていることも示した。
その時点で、本来なら、安倍総理が発言できるのかどうかが日本でも話題になるはずなのに、日本のメディアはこれを報じなかった。日本の記者たちには、そうしたニュースを取ってくる情報網がないからだ。
安倍総理が本サミットに無理やり参加しようと思えば、できたかもしれない。しかし、そのためには、石炭火力の新設をやめるというような積極的な発言をしなければならない。もちろん、そんなことはできないし、やる気もないから参加を諦めたわけだ。
今回の安倍総理欠席の真相を知れば、多くの日本人は、日本が世界の批判の的になっていることに驚くかもしれない。しかし、実は10年以上前から、日本は気候変動枠組み条約(パリ協定)交渉などの国際舞台で、世界中から笑いものにされ、強い非難を浴び続けていたことを日本の環境NGOの人々は知っている。