林:先生のようなお仕事をなさってる方って、体育関係の学校出身の方が多いですけど、先生は大阪大学の工学部出身なんですね。

谷本:筋トレは、力学的な運動で筋肉に生理学的な適応を起こさせる作業なので、分野的には理系なんです。

林:そして大学院は東大で。

谷本:石井直方先生(理学博士、元ボディービル日本・アジア王者)のところに行きました。僕が高校生のときには、今みたいなスポーツ科学の学部がなかったので、工学部に行って、設計会社に一度は就職しました。でも、やっぱり捨てきれない思いがあって。自分なりに筋トレの勉強はしていて、そこで石井先生の記事に出会って、全身に電気が走ったんです。そうだ、ここに行こう!と、東大の大学院を受験しました。

林:頭のほうもしっかり筋トレされたんですね。私、5~6年前に加圧トレーニングをけっこうやってたんですけど、あの研究も東大ですよね。

谷本:学術論文を最初に書いたのは当時石井研究室にいた宝田(雄大)さんという方です。だから加圧の研究は石井研究室が最初です。僕も、加圧の論文を1本出してますよ。

林:そうなんですか。

谷本:あれはいいです。ほんとに効果ありますよ。キツくて、かなり痛いですけどね。

林:私、ぜんぜん痛くなかったです。

谷本:それは適切な処方とはいいがたいですね。効果のある圧はなかなかに耐え難い痛みですよ。みんな悶えます。もちろんきちんと指導しているところもありますが。

林:ヤだ、もう。善良なデブをだましてひどいじゃないですか(笑)。

谷本:筋トレは科学ですからね。生理学的な根拠に基づいた適切な方法で行わなければ効果は下がります。

林:筋肉体操はどうですか?

谷本:「みんなで筋肉体操」は科学番組と考えて作っています。体のことだから生理学が必要で、動きなので力学もいります。たとえば、実は腕立て伏せは、床を真下には押していません。手幅によって押す方向が変わります。それを考慮して力学計算や筋肉の生理解剖特性に基づいてフォームを決めています。

(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力:一木俊雄)

週刊朝日  2019年10月4日号