谷本:ラクして変われたらみんなイイ体していますよ(笑)。「みんなで筋肉体操」(NHK)はその真逆を貫きました。「本格的にやらないと変われないんだよ」と。市場に媚びるような今までのマーケティングに一石を投じられたのかもしれませんね。それが受け入れられたのは喜ばしいことだと嬉しく思います。

林:ほぉ~。ところで、腕の筋トレはやっぱり腕立て伏せですか。

谷本:腕立て伏せはいいですね。やってみればよくわかります。女性は腕立て伏せはあまり強くないので、テーブルで行うのが良いでしょう。やってみましょうか。

林:は、はい……。

谷本:テーブルから1メートルぐらい離れて立って、手をテーブルのふちに置いて、体を真っすぐに構えます。そこから腕を曲げます。胸がテーブルにつくまで……。

林:つ、つかないよ~っ(笑)。

谷本:キツかったら片足を少し前に出してもいいです。腕立て伏せは「伏せ」ですからね。胸がつかなければ腕立て伏せ“かけ”ですよ。

林:はいっ、つきました先生っ。

谷本:そしたら腕を伸ばして元に戻して。あと3回!……。はい、ありがとうございました。

林:ふ~っ。

谷本:テーブルでも良いですし、安定したキッチンシンクで行っても良いですね。

林:先生、筋トレになるととたんに厳しくなりますね(笑)。人は「あと10秒」と言われたときに、9秒たったところで達成感を得てやめてしまうので、筋トレの際にもその心理に負けてはいけない、と先生はおっしゃってますよね。

谷本:はい。時間を区切った筋トレを学生にやってもらうとその様子がよくわかります。たとえば「30秒めいっぱい腕立て伏せ」と指示してカウントするとみんな29秒でやめて、最後の「30」をつぶれた(ダウンした)状態で聞くんです。脳のアルゴリズム研究をされている先生によると、「人はゴールが見えたところで達成感を感じてやめてしまう」そうなんです。雪山で遭難された人は山小屋のドアの前で亡くなられることが多いといいます。だから筋トレでも最後の「あと一回」までやめずにやり切るのが大事。これをいつもしっかりやっていれば、他のことでも最後の一歩が詰められるようになるかもしれません。

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