こう主張する山本氏が、消費税廃止を実現した国の例として挙げたのが前述したマレーシアだ。

「マレーシアでは、消費税が物価上昇を招き、国民からの不満がたまっていたんです。マハティール首相が消費税ゼロを実現し、財源が失われた部分はあるけれど、高級なサービスなどを受けたときにかかるお金持ち向けの旧税(SST/売上税・サービス税)を復活させました。わかりやすく言うと、定食屋ではそうした税はかからないけど、高級レストランではかかる、みたいな話です」

 消費税廃止以前は非課税品目が545だったが、旧税を復活させたことによって、非課税品目が5443品目に拡大した。

「これだけでも随分、一般の消費者にとっては負担が軽減されたと思います」

 廃止から1年。マレーシアの2019年4~6月期の実質国内総生産(GDP)は前年同期比で4.9%増(日本は1.0%増)と伸び、GDP全体の6割弱を占める個人消費は同7.8%増(日本の民間最終消費支出は0.9%増)と好調さを示した。

「消費税をやめることによって一気に消費が高まり、旧税を復活させた反動で一回落ち込む。けれどまた上がっている状態だと思う。マレーシア政府の見解は、成長することによって税収を増やしていく、と明確に示しています。普通に考えて、消費の落ち込みというのがあったならば、消費にかかる税金を軽減していくのは当たり前の話なんですよね」

 参院選の前、山本氏は消費税5%への減税を主張していたが、選挙では「廃止」になった。どうしてなのだろうか。

「消費税は5%に減税、を野党の共通政策として参院選を戦いたい狙いがありました。落とし所を5%にするためには、廃止でプレッシャーをかける必要があると。5%がかなえば旗を降ろすとまで宣言していましたが、影響なかったようで(笑)。野党は『増税凍結』で選挙に突入した。ですから本番でも遠慮なくこの国に一番必要な廃止を訴えました。8%から5%、3%を経由して段階的に廃止するやり方だと、次に税率が下がるときまで待とうという買い控えが生じるおそれもありますから、本物の景気回復には廃止のほうがいい」

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