1980年には1ドル=1.5人民元だったものが今は7人民元。5分の1になった。対円では1人民元が160円もしたものが今は15円と11分の1に。

 これでは中国が世界の工場になり、日本の競争力が下落したのも当たり前だ。中国は日本の失敗を見て、米国がいくら通貨切り上げを迫ってもお茶を濁す程度にしか切り上げてこなかった。

 今回は戦争になった以上、元安をはばからないだろう。為替の重要性に気付いた中国と、認識できなかった日本で大きな差ができたのだ。手遅れとはいえ、将来のためにこの事実を心に刻んでおかなくてはならない。

 中国の最強の対抗策は保有米国債の売却だ。これをやれば中国も保有国債価格が下落し自分で自分の首を絞めるが、予期せぬ事態も起きるのが戦争。総力戦となれば最後には中国が踏み切る可能性もゼロではない。自分が重症になろうとも、米国が重体に陥ると思えば仕掛けるリスクはある。

 その場合、日本経済は“即死”だ。世界最悪の財政状況と不健全な日銀財務は全世界的な金利上昇に耐えられない。私がこのコラムで、「乱気流に備えてシートベルトをお締めください」と訴えてきたことが、いよいよ現実になろうとしている。

週刊朝日  2019年9月27日号

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藤巻健史

藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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