舞台『ペコロスの母に会いに行く』の出演者。左から、田村亮さん、小林綾子さん、藤田弓子さん、若林豪さん
舞台『ペコロスの母に会いに行く』の出演者。左から、田村亮さん、小林綾子さん、藤田弓子さん、若林豪さん

 認知症の母と介護する息子の日常をユーモラスに描く舞台『ペコロスの母に会いに行く』の記者会見が9月16日、東京都大田区の介護付き有料老人ホーム「ファミニュー大森南」で開かれ、出演者の藤田弓子さん、田村亮さん、小林綾子さん、若林豪さんといったベテラン俳優が出席した。

 ペコロス(小タマネギ)を自称する漫画家・岡野雄一さんの介護体験をつづったエッセー漫画が原作。認知症を発症し施設で暮らす高齢の母・みつえと、故郷に戻ってきたバツイチでハゲちゃびんの息子・雄一との何げない日常を、笑いと切なさを交えて描いている。2016年に厚生労働省の推薦を受けて舞台化され、昨年に続いて2度目の全国公演となった。

 記者会見で、母・みつえ役を演じる藤田弓子さんは、こう語った。

「長年やっているということは、絶対に面白いからです。再演をしてくださいと言われてから、ぜひ私もやりたいと思いました」

 みつえが入居するグループホームの主任を演じる小林綾子さんは、舞台を通じて介護への認識が変わったという。

「私の両親はまだ元気ですが、いずれ介護が必要になってくる日が来ます。うまく施設を利用しながら、寄り添って介護していけるようになって行けたらいいのかなと。全部自分で背負いこまず、いろんな人の手を借りながら、一緒に楽しく過ごしていけるようにしていきたいと思えるようになりました」

 出演者らが、有料老人ホームに入所する利用者の手を取って会話する和やかな場面もあった。

 漫画家の岡野さんは、本誌の取材にこう答えた。

「まだまだ認知症の介護の話は暗くなってしまいがちなので、明るくユーモアを交えて広げるという意味では、舞台はすごくいい形だと思います」

 自費出版から始まった原作は、12年に西日本新聞社から出版され、たちまち口コミで広まってベストセラーに。13年、日本漫画家協会賞優秀賞を受賞。すでに映画やドラマにもなっている。

 また、週刊朝日では『ペコロスの母の玉手箱』が13年から6年間にわたって連載された。単行本は、朝日新聞出版から発売されている。

 舞台は、9月25日から東京・大田区民プラザを皮切りに、全国9会場13公演を予定している。(本誌・岩下明日香)

※週刊朝日オンライン限定記事