林:まあ、病室の窓からそんな……。

内田:その母の言葉がきっかけで、私は「不登校新聞」の編集長や、不登校経験者や、不登校の子どもを育てたお母さんや、教育者などにお会いして生の声を聞かせていただいたんです。「人生この道しかない」じゃなくて、いろんな道があって、いろんな曲がり方があって、時には立ち止まるときもあるし、社会全体の大人たちが選択肢を広げてあげれば、すぐ死に結びつけなくてすむんじゃないか。そんなことを母の言葉をきっかけに考えさせてもらったんです。この問題に関しては、これから折に触れ、いろんな方と対話を重ねていけたらいいなと思っています。

林:それはお仕事としてやっていこうとお考えなんですか。

内田:お仕事というか、できることを一歩一歩。母からバトンをもらったので、自分なりに少しでも何かのお役に立てればいいな、と思っています。

林:素晴らしいことですね。一周忌が終わったら、またロンドンにお帰りになるんですか。

内田:いえ、半分半分がいちばんいいですね。ロンドンと日本と。

林:今日は久しぶりにお目にかかって楽しかったです。

内田:私も。次はまた20年後に(笑)。

林:私が生きてたらね(笑)。

(構成/本誌・松岡かすみ)

週刊朝日  2019年9月20日号より抜粋