最近、「原発を続けるべきか、それとも再生可能エネルギー(自然エネルギー)に切り換えるべきか」という二者択一の設問を掲げる人間が多く、市民運動でも最近の主流になっているが、原発と自然エネルギーは、いずれもよくない、という事実が抜けている。
何もかもまとめて自然エネルギーと呼ぶのは間違いで、私が日本で推奨できる自然エネルギーは、住宅や工場の屋根に設置するソーラーパネルと、小水力発電ぐらいである。メガソーラーや風力発電が、広大な山林を伐採して日本の自然破壊を進めていることに、どれほど多くの人間が迷惑しているかということも知らないのが、最近の心ない大都会の人間と市民運動かと思うと、愕然とする。
地熱発電は、日本では温泉を枯渇させたり、地震を誘発する。バイオマスも、福島原発事故で山林が放射能を浴びた東日本では、廃物木材を燃焼させると放射性セシウムをまき散らすので、危険である。
日本では、原発をゼロにするのに、自然エネルギーも不要だから、あわてて普及させる必要はない。東日本大震災後、2013年9月15日に福井県の大飯(おおい)原発が運転をストップしてから、2015年8月11日に鹿児島県の川内(せんだい)原発が再稼働されるまで、ほぼ2年間、真夏の猛暑期も、真冬の酷寒期も、「完全に原発ゼロ時代」を達成したのが日本であった。その2年間の電力を、どのようなエネルギーが供給してくれたかを、自ら大電力消費者であるテレビ報道界は、国民にしっかり伝えるべきである。
この表の通り、2014年度の原発はゼロ%で、自然エネルギーもゼロに等しい3・2%、つまりクリーンで資源量が豊富なガスと石炭と、少々の水力発電で日本全土の電力をほとんどまかなったのだ。10%近く石油が使われているが、これは工業界がガソリンやプラスチックなどに使った残りの重油を火力に使った廃物利用だから、実質的にはゼロ%とみなしてよい。この数字は、当てにならない「目標」ではなく、「実績」なのである。
おわかりになりましたか?
(広瀬隆)
※週刊朝日オンライン限定記事