稲垣:今はプレゼントするなんて無理な値段ですよね。とにかく値段の高騰ぶりがすごい。でも僕、ロマネ・コンティを造ってる、ブルゴーニュ地方のヴォーヌ・ロマネ村の畑、行ったんですよ。行って何でそんなに高いのかがわかりました。畑がわずか1.8ヘクタールと小さくて年間6千本しか造れない。それで世界中の人が買おうとするから、そりゃ希少価値は上がりますよね。
林:私も行きました。今は投資のために買う人もいるのかな。
稲垣:そういうクラスになるとあるかもしれないですね。だけどそうなるとなんか、楽しくないですよね。やっぱりワインは楽しく消費するものだと思う。
林:ワインのいいところって、友達と複数人で飲むものというところですよね。みんなで飲むと、味わう喜びとか、幸せを分かち合うという感じがするし。
稲垣:そうですね、それが楽しい。
林:だからケチな人はワインのコレクターには合ってないよね。ワインって、一人で飲むものじゃなくて、人に飲ませなきゃいけないから。宝石とかと違って、いくら高いものでも一人じゃ飲まないでしょ。
稲垣:だからワインごとに、そして飲む人ごとにストーリーがありますよね。そういうところも、ワインっていいなあと思います。僕、いつかワインを造ってみたいなあ。
林:えっ、ほんと?
稲垣:そりゃ好きだし、興味はありますよ。そしてせっかくワインを造るんだったら、海外でより日本がいいな。
林:「吾郎ワイン」、いいじゃないですか。
稲垣:日本だとワイン造りに適した土地ってどこなんだろう。
林:やっぱり山梨ですよね。特にここ勝沼は、甲府盆地の東側に位置していて、ブドウが作りやすいし。山梨は今も全国1位の生産量ですよ。
稲垣:やっぱり山梨ですか。でも新しく始めようと思っても、土地がないんじゃないですか?
林:高齢化で畑やワイナリーを手放す人も多いですよ。居抜きで譲ってくれるところがあったらいいのにね。山梨だと東京からも車で1時間だし、アクセスもいいし。
稲垣:やってみたいですねえ。なんて軽々しく言えるほど楽な話じゃないと思いますけど……。
(構成/本誌・松岡かすみ)
※週刊朝日 2019年9月6日号より抜粋